公開日:2025年11月18日
日常の中にある“気づき”の力
臨床検査室では、日々の業務が繰り返される中で、ふとした違和感に気づくことがあります。
「いつもと少し違う」「なんとなく気になる」──こうした感覚は、時に重大なリスクの兆しであり、検査の信頼性を守る鍵となります。
ISO 15189が求めるリスク管理の本質も、まさにこうした“気づき”を大切にする姿勢にあります。
検査室の安全性は、設備や手順だけでなく、現場で働く人の感覚と判断力によっても支えられています。
そのため、スタッフ一人ひとりが「気づく力」を持ち、それを共有できる環境があることが、医療の質を守るうえで欠かせません。
安全文化は、声を挙げられる環境から
ある検査技師の方が、こんな声を寄せてくださいました。
「違和感を覚えても、忙しさの中で流してしまうことがあります。でも、声に出してもいいのだと思える雰囲気があると、自然と注意深くなります。」
この言葉が示すように、リスクを見逃さないためには、スタッフが安心して気づきを伝えられる雰囲気づくりが重要です。
ISO 15189では、リスクの特定・評価・対応が求められますが、それは単なる文書や手順の整備ではありません。
検査室の安全文化は、スタッフ同士の信頼関係、日常的なコミュニケーション、そして教育や訓練によって育まれていくものです。
「声を挙げられる」環境があることで、検査室は小さな違和感を見逃さず、重大なエラーを未然に防ぐ力を持つようになります。
“なんとなく”を大切にするということ
「なんとなく気になる」という感覚は、数値や記録には現れない、現場の経験に根ざした重要な情報です。
これを軽視せず、共有し、検討する姿勢が、検査室の信頼性を高めることにつながります。
医療の質を支えるためには、こうした“現場の感覚”を仕組みとして活かすことが欠かせません。
例えば、ヒヤリ・ハットの報告や内部監査の場で、違和感を記録し、チームで振り返ることができれば、リスクへの感度はさらに高まり、再発防止の意識も育まれます。
このプロセスは、品質管理担当者だけでなく、すべてのスタッフが関わるべきものです。
医療の信頼を支える“気づき”
検査室での小さな気づきは、医療全体の安全性を高め、患者さんの命を守る力になります。
「なんとなく」を見逃さない姿勢は、検査の精度を守るだけでなく、医療の質向上にもつながります。
検査室が“気づき”を大切にする文化を育てること──それこそが、安全で信頼される検査室のあるべき姿です。
PJLA MedLASでは、こうした現場の声に耳を傾けながら、検査室が築いてきた安全文化を尊重しています。
認定審査は、単なる制度的チェックではなく、検査室がより良くなるための“気づきの機会”でもあります。
私たちは、検査室のみなさまが日々積み重ねている取り組みを正しく評価し、その価値をともに見つめていくことを大切にしています。




